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中澤が研究している諸テーマ  関連して著書・論文一覧はこちら

 ■ 自治とサステナビリティの地域社会学 

 地域社会は現在、大きな変動の波に洗われています。そのなかで、地域の持続可能な自治はどのようにしたら実現できるのか、どのような将来像を描けばよいのか。これが私の現在の一番の関心事であり、理論・実践の両面から、その方向性と戦略を描き出そうとしています。

住民投票の社会学 | 地域の自治をつくっていく一つの手段として住民の自己決定運動をあげることができます。新潟県巻町をフィールドに10年近く調査を続け、その成果は折々に発表してきました(業績リストB2, C2)。それらを発展させ、05年秋に『住民投票運動とローカルレジーム』を出版しました(業績リストA4)。

まちづくりの社会学 | 北海道野幌、千葉市稲毛と、それぞれ大学の地元に関わるようになり、学生たちとともに「まちづくり」の方法論を手探りで考えています。北海道野幌については、2本の試論をまとめました(業績リストD2, B8)。ここから、コミュニティ論やNPO論にも接続していきます。とくにコミュニティ政策と実践に関連して(業績リストA7)を執筆しました。

地域社会の現在像 | 地域社会がどんな変動のもとにさらされているのか、そのこと自体が多様化して見えにくくなっています。その現在像を捉えようと苦闘していますが、試論的にまとめたものとして(業績リストA5, A6)が挙げられます。これから、地域間亀裂論とでも呼ぶべきものとしてより展開したいと思っています。

農とツーリズムとエネルギー | 今後、持続的な地域をつくる鍵はこの三項目にあると考えています。エネルギーについては、新潟県巻町・柏崎市でのフィールドワーク(業績リストA6)が考察を深める良いきっかけを与えてくれました。試論的に方向性を示したものとしては(業績リストA6, C4, C5)があります。

サステナビリティ論と環境自治体 | 持続的な地域づくりを考えていく上で「環境自治体」運動は参考になると考え、1999年から3年ほど断続的に鎌倉市の調査を行いました。成果よりも課題の方が多いというのが率直な感想ですが、この調査およびそれを踏まえた理論的展開については、(業績リストB7, C3, C4, C5)にまとめました。

 ■ 「社会的亀裂の時空間」の理論化

 東京圏が複数化・分極化・断片化するのかどうか。それに関連して千葉は東京圏の一部となるのか、別の生活圏を形成しうるのか。リスク社会が進展するなかで、情報格差という形での時空間の亀裂が拡大・顕在化しているのではないか。こういった問題意識をもっています。自分ながらもどかしいのですが、これについてまとめた論文はまだなく苦闘しています。とりあえず、(業績リストA5, A6)においてこの論点に部分的に触れています。また千葉をフィールドとした実態調査の手始めとして、05年度の千葉大社会学研究室調査実習にて準備的なサーベイ調査を行ったところです(業績リストF9)

 ■ データアーカイブ論・社会調査論

 札幌学院大学社会情報学部でSORDというデータ・アーカイブの運営に関わりはじめ、現在もチームの一員です。ここから、データアーカイブ管理学について考察する必要が出てまとめた仕事が(業績リストC4)です。とくにSORDは2002年以降、道内社会調査の発掘・再解釈から北海道社会論を展開する方向で発展しており、その成果については(業績リストC11, C12)をご覧下さい。

 またこれとは別に、社会調査スキルを現場で試す試みとして、UHB北海道文化放送と共同で「札幌市民のくらしとテレビに関する調査」を実施しています(業績リストF8)。これを実施することになった経緯については札学離任時に3年半の経験をまとめた文章(業績リストC10)で少し触れています。 

 ■ 授業技術の改善/情報技術による研究室環境の整備

大学外からは見えにくいことですが、私はこれも研究の一つだと考えています。札幌学院大学時代には、いくつかの授業改善の試みを論文にしました(論文名をクリックするとPDFファイルが開きます)。

 (1)履修者が極端に多い社会調査実習(おおむね100人以上)を運営した経験から、社会調査運営論の必要性を論じた 「[pdf]経営としての社会調査」 (業績リストC8)。(2)文献・インターネットによる資料収集の方法を教える『資料収集法』という科目の立ち上げ経験から、文系教師が情報技術を用いて参加型授業を合理的に運営する試みを紹介した「[pdf]文系教師のconvivial toolとしての情報技術」 (業績リストC6)。(3)『情報メディア論』授業で映像素材を多用した経験から、受講生の映像リテラシーを高めるための講義改善の工夫や理念についてまとめた 「[pdf]メディア産業論から視聴覚リテラシーへ」 (業績リストC7)です。実は、札幌学院時代の授業改善の試みについては、まだまだ書き足りないことがたくさんあります。もっとも、札幌学院を離れるときに3年半を振り返った文章「[pdf]経営することを学んで」 (業績リストC10)で尽きているような気もします。

■ 社会運動論/集合行為の歴史社会学 

 アカデミックには、私は社会運動論の研究者として出発し(業績リストB1)、同世代の研究者と一緒に社会運動論のレビュー(業績リストA2, A3, B4, B6, C3)や新聞記事コーディングによる戦後住民運動史分析(業績リストB3, C9)、戦前小作争議の計数分析(業績リストA1)などを行った結果が先に出版されています。ですので、私を社会運動論の研究者と認識している方も多いと思いますが、本人としては、しばらく社会運動論を真っ向からやるつもりはありません。院生時代の出発点で多くを学ばせてもらったことは間違いないのですが、上記したように「地域はどうすれば恢復できるのか」「どうやったら人々がゆっくりとhappyになる生き方を実現していけるのか」というのが私の現在の根本的な問題意識であり、そこに至る道程において運動が役に立つ場合もあればそうでない場合もあると考えています。

 したがって、「社会運動論」という研究テーマは、札幌学院に就職した2000年頃から私の中では後景に退いており、Tillyなどに倣った「国家と集合行為の歴史社会学」は、(クビにならなければ)定年後にでも細々と展開できればいいと思っています。こうしたアカデミックなテーマは、いますぐに誰かが研究成果を必要としているという種類のものではないからです。地域や教育の現場で、私に問いかけられてくる、もっと切実な様々な問いに答え、現状を明らかにし、戦略を考えることの方が優先されると考えています。横文字の輸入も自覚的に中止しています。もちろん、運動論が必要とされる局面が出てくれば、必要な限りにおいて展開しますが、その場合の理論は上記したような一連の仕事からはいったん切断されるのではないかと考えています。


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